メモ:「別の視点」からのプロジェクションマッピング作品

キャンバスの絵が動き出す。そしてキャンバスを飛び出す。
キャンバスの範囲に収まらない絵というのは、名画というかよい作品ではよくそうなっていると思うのだけれど。
それを、もっとあからさまにやった作品。

そのはみ出た余白に何かを感じるわけですよね。それを視覚化しちゃった。
ある意味、無粋なわけだけど。

やっぱり素直にかわいいし、いい作品だなと思います。

シン・ゴジラに感服した。嬉しかった。怒る人も多いだろうな。

趣味は何?と聞かれることが増えてきた。
あまりにも忙しそうにしているので、仕事以外に何をしているのか興味を持ってもらえているのかもしれない。
もしくは、夏場になり、薄着になるため、私が非常に細身なことに心配され「痩せてやつれている」と思われるからかもしれない。
(体重はむしろ増加傾向ですのでご安心を?)

で、趣味は、SFを見ること。
特に宇宙が好きだが、未来のものもそう、過去のものでもそう。
そして、別の科学による別世界のシミュレーションもだ。

さて、今日は、ふとアポとアポの間に時間が空いた。映画でも見ようと思い調べたら「シン・ゴジラ」の公開2日目。
これも何かの縁かと、IMAXで見てきた。

ゴジラは、これはいわゆる同時代の別世界シミュレーション系に位置すると思う。
(ちょっとネタバレするかもしれません)

■正直、感服した。まずは特撮のクオリティ

庵野秀明監督といえば、エヴァンゲリオン。そして、ジブリの解体後に後を引き継ぐという噂も流れていた人物。
庵野さんがジブリの後を継がず(こっそり継いでいるプロジェクトもあるのかもしれないが)
アニメじゃなく、実写でコツコツ作っていたのがこの「シン・ゴジラ」だ。

日本がとうとう「SFの実写」をこのレベルで作り上げることができるようになったか。
ということにまず正直に嬉しかった。スタッフロールにも特に海外のVFX会社の名前も見あたらず、
ほぼ日本人によって作られたようだっった。

特撮に違和感がない。おそらく模型や3DCG、そして実写を組み合わせているはずだが、
人物へのライティングが多少甘いなと感じる部分以外は、溶け込んでおり、
世界感に没入できる。もうこれだけでいろいろ許せる。

■庵野風(エヴァ風)演出が様式美に

本人がやってるのだから、なんの問題もないが、
エヴァそのままか! みたいなシーンと演出がいっぱい登場する。
まずはフォントが似てる(同じかどうかは検証せず)
字幕の、○○自衛隊駐屯地 と出た 次のシーンに 同・ヘリポート など、
言葉遣いの方向性も似ている。

そして戦略を練る際のBGMは、まさになんとそのままエヴァの「アレ」だ。
しかし、あの曲は、もういろんなテレビ番組でそのようなシーンのBGMとして使われまくっている。
定番の「戦略練り曲」として、あの曲は位置づけられていて、
それを引用したと考えてもいいのかもしれない。

また、エヴァでの特徴であった「カウントダウン」の演出もしっかりと組み込まれている。

■政治が大きく絡む ー 本来の優秀さを発揮する場

政治家と官僚。リアルな日本で、政治家は正直、玉石混淆度合いの幅が広すぎると思うのだが(私の勉強不足です)
この国家の官僚が優秀なのは、直接お会いしたことがある方や、政策を見ていても、私はそう感じている。
地方公務員を官僚というのかわからないが、身近にいる京都市役所の方々でも本当に優秀だ。
そして、彼らは、本気になって国のために街のために取り組んでいる人が非常に多いと感じている。

ただし、日本人は日本人だ。とにかく戦略を練る力と決断力が弱い。

ただ、それが、ゴジラという新たな外圧、、、というにはおそろしすぎる生命を脅かされる存在により、
一気に決断力が見えてくる。この描き方に喜びを感じる。

日本ももう少し危機にさらされるべきだろう。そうすれば元々持っている真面目さや変態性が発動することだろう。
(すでに発動している日本人が世界で活躍していることを考えると、やはりもう一歩加速してほしい)
庵野監督のそういうメッセージは非常に強く、そしてストレートに入っている)

前半部分の、普段の日本の閣僚会議などをイメージさせる「シャンシャン型」儀礼的な会議の描き方も
その対比となっている。あの辺はコメディでもあるのだろう。

■かたやのお役所仕事 ー 決断のスピードの遅さ

踊る大捜査線や、パトレイバー2などで描かれる、警察官僚内での手続き論や権力争い、
現場との乖離。このあたりもしっかりと描かれる。日本的政治の中で、いかに動くか。
皆が戦っているところだろう。ええ加減にせんとスピードがほんとに遅くて困るけど。
日本の歴史は長いので、やっぱり建国200年のアメリカとは、タイムスパンが違うような気もする。
建国400年の東京と、建国1200年の京都の時のながれが、こんなにも違うのだから
(あ、確かに感覚的に4倍くらいゆっくりかもね)

■総理大臣の継承順位

24 や GALACTICA 私が先に書いたエントリーのLAST SHIPなど、アメリカでは「大統領継承順位」が
ネタになることが非常に多い。
今回、総理大臣の継承順位と、そのプロセスなどが描かれていたのは、興味深い。

また超法規的立法などを、一応成立させなければいけないこと、
根回しをきっちりと行うところあたりなども、24やGALACTICAなどで丁寧に描く部分を2時間の映画に
要素として盛り込んでいるところは、すばらしい。

■女性の防衛大臣

余貴美子さんが演じられている防衛大臣。女性閣僚が増えてきているが、女性の防衛大臣が成立、
機能するかということがあり得るだろうか。そのシミュレーションも見せている。
多くの女性は戦争に向かない。これは偏見でなく、おおむねの性差である。
しかし、その一般的な傾向に反した女性の防衛大臣が描かれたことも、また異議あることである。
アメリカの映画やドラマで黒人大統領が描かれ、最近は、女性大統領が描かれることが多いことと含めて、
また政治的シミュレーションの表現としておもしろい部分だ。

■陸海空自の描き方

空自だけ、きっちり英語での指示系統になっているところがまず良い。
これは、私は押井守監督の機動警察パトレイバー the Movie2 で初めて知ったことだった。
あの、幻の東京爆撃のシーンは、日本のアニメ史上歴史に残る名シーンだと感じている。
あの要素が、きれいに見えている。三沢からF2を上げる、というセリフなんかは共通しており、
おそらくオマージュとして使われているように思う。

また、富士総合火力演習での陸自の戦車の精度がよくネットで話題になるが、
それの動きを意識した、戦車の動き、砲撃なども、陸自の練度を示すという面でも、
非常に良いプレゼンテーションとなっているだろう。

海自はやっぱりこの映画でもあまり描きにくかったけど、しっかり巡航ミサイルは撃っていた。
(ゴジラが海にいる間に戦いが勃発すれば、海自にも活躍の場が与えられたのだろうとは思うが)

■日米安保でアメリカは日本を守ってくれるのか否か

アメリカとの関係性もこの映画の中で話題になる。
近代国家になってから、日本はやはりアメリカの属国であり、そして友人であることは、
実社会でも感じることではある。(政治の面では、欧州よりもやはり米国だろう)

アメリカが本当に友人であるのか。そこにも課題は投げかけられている。

日米安保が機能しないことを証明する漫画として、かわぐちかいじさんの「沈黙の艦隊」があって、
この面をずばっと描いているから、この漫画は大好きなのだが。
(あと、前述のパトレイバー2も)

シン・ゴジラでは、機能する部分としない部分、この両方描いている。
これがすばらしい。現実への皮肉と希望。人間の可能性。

■米国大統領特使との日英・バイリンガルでのコミュニケーション

これが現代日本を象徴しているひとつのシーンで、
いま、作られるSF映画として、非常に気持ちいい部分だった。

特に主役の、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)と、米国大統領特使・カヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)の
会話にこの空気がよく現れている。

私たちがTEDxKyotoを運営しているときに、アメリカ人がいて、それ以外の外国人もいて、そして日本人がいて。
参加している人たちは、自分の母語じゃないほうは、だいたい分かる、っていうコミュニケーションを日々している。

誰かが日本語でしゃべってても、それに英語でかえってきたり(日本語でしゃべった人も英語は聞ける)

今以上に、こういう世界になるだろうし、ここはなっていかないといけないだろうなと思う。
なれば、日本はもっと世界で活躍できるだろうし。
いまは、日本とアメリカ、またそれ以外の国との、外交のパイプも想像以上に細いというのが
最近の記事でみかけたことがある。

キーパーソンに頼るのではなく、面と面で、国同士がコミュニケーションして政治や社会を動かすことを
目指してほしいと個人的に思っている。
通訳を介さずこのようにコミュニケーションを取れることがあれば、
国同士の利益の奪い合いはあったとしても、国と国の戦争、ということは、発生しにくいだろうな、とも。

日本以外の国益で、日本に大きな攻撃が加えられそうになるが、それにどう対処するか、という部分について、
このことが描かれていることも、とても気持ちいい。

■ ゴジラの出生の秘密と、その後の戦い方は、破棄物13号(パトレイバー)に準ずる?

パトレイバーの漫画でのエピソードで、映画版3でも描かれた「廃棄物13号」
ゴジラのパワーは、13号なんかを遙かに上回るが、ゴジラとの戦い方は非常に共通することがある。
13号についての情報も米軍が先に持っていたという設定も近しいし、
ここは、押井守さんだけでなく、パトレイバーの漫画原作のゆうきまさみさんの影響も
かなり見ることができる。

■すべてを仕組んで死んだ科学者は

ゴジラに登場したそのキーとなる科学者の名前は忘れちゃいましたが、
位置づけは完全に「パトレイバー1の帆場暎一」 そして、メッセージは「パトレイバー2の柘植行人」とリンク。

■謎解きは「映画 コンタクト」

ある謎が、カールせーガン原作 ロバートゼメキス監督の「コンタクト」に近いものになっている。
(に、日本の要素を入れている)
この映画も、私が高校生頃に見て、本当に宇宙に対して良いなと感じたSF。いろいろ嬉しい。

■この時期に、原子力(放射能)と、破壊をあつかったこと

といいうより、東日本大震災から5年が経ったから、ようやく描けた(公開できた)と考えるべきだろうか。

ゴジラは、元々の設定から反原爆・水爆の思想から生まれていると記憶している(オリジナルのゴジラファンではないのですみません)
今回も、ゴジラは原子力がテーマだ。ただその設定に、単なる生物としてではなく、なぜあの巨体が動くか、ということに、
エネルギー源が核分裂を応用しているのではないかと示唆される。

これまたSFの名作のスタートレックのどこかの回で「核分裂という火遊び」という表現があるのだが、
核分裂エネルギーに対する今後の展望をゴジラに乗っけるということを行っている。

ノブリスオブリージュ(力を持つものには責任が伴う-(これをモチーフにしたSFは、東のエデン 神山健治)。
だが、核という力を持つ人間にも責任が伴う。ということ。
核のポジティブな可能性について、再度ここで描いたことは、私は好ましいと感じている。
核分裂の原子力発電所が家の横にあったら、やっぱりやばいと思っているので、核分裂の原子力発電所の問題は、
はやく次のステップに進まないといけないわけだが。

核分裂の放射能にどう対応するかのヒントをゴジラから得るとか。
(これは、攻殻機動隊の士郎正宗による設定、放射能を無効化するナノマシンの開発「ニッポンの奇跡」とも呼応する)

そして、3.11後の世界だからこそ、東京都民がガイガーカウンターを持っていて、
ゴジラが通ったあとの放射線量の増加を、みんながTwitter的なもので数値を報告しあっているという描写も
地味にリアリティがあり、素敵だ。

■日本はスクラップアンドビルドでやってきた

決め手になるセリフなので、ネタバレで申し訳ない。
ただ、津波によって流されることもそうだし、大地震によってすべてを失うこともそう。
そして、第二次世界大戦をもちろん踏まえたセリフ。

戦後の建築の世界も、ずっとスクラップアンドビルド(これはほんとにやめて欲しいけど)

なぜこんな激しい土地で、2000年近くも国をやってこられているのか。
いや、ほんとおそろしい国民なのですよ、日本人って。

スクラップアンドビルドに日本人は強いのは間違いないのかもしれない。

式年遷宮をやり続けて、常に「さら(新品)」の状態を更新し続けるという思想からも
日本人の根本なのではと思っている。

破壊と創造の繰り返しをしながらも、けっこう物忘れが激しく、
おだやかに暮らしているような気になっている日本という国の性質。

いや、ただそういう激しい苦難に辛抱強いっていう性質も表現したのかもしれない。
(ただし、細かいことに対しての辛抱はめっちゃ弱い。手続きの遅い窓口にいらつくとかね)

■脚本も良いということだろう

日本映画(実写)は脚本が本当に弱いと感じる
ストーリーの練りが足りない。

でも、アニメにおいては、決してそうではなくて、
アニメの脚本は、逆に言うとかなり良いものが多かったのではないかと
改めて感じる。

今回の映画は、最近の海外(アメリカ)ドラマや、日本のアニメの名作、
そして、もちろん特撮の伝統、人間模様、政治、テクノロジー
すべて含んで語っている。

台詞には少々わざとらしいところがあるが、
とはいえ、そういう意味で、英語で会話を重ねている部分が入っているところで
そこをカバーしてたりとか。

とにかく作り込みがほんとにエライ。すごい。感服する。

■現代日本のリアリティと今後に目指す姿のひとつの思想が全部入っている

いや、よくこれだけの要素を2時間に入れ込んで、破綻させなかったものだ。
これは、テンポのよいカット割りや多くの情報を短時間に納めるという、
庵野さんの技なのだろう。

そしてこのはっきりとした思想とメッセージ。
これ見て、きっと、いっぱい怒る人でるだろうな、いまの日本で。

ただ、今の日本をほんとに客観的に見て、ゴジラという偶像にいろんな希望と悲哀も乗っけて。

ものすごく強いメッセージが入っている。

今日の客席、100%男性だったな。
仕事をする女性、社会を動かす女性には、怪獣かよと毛嫌いせずに見てほしいなとも思う。

こんな(実写)映画を作れる人が、また日本に現れてよかった。

この映画に対するまったく前知識もなく(予告偏もみず)、既存のゴジラも見たことない状態だったのに、
見ようとおもってほんとによかった。

■スタッフロール

スタッフロールは、これまでの常識を覆す配置。
そして、企業ロゴの配置は、どこかの家電の袋のようなデザイン。
タイポグラフィにこだわりのある庵野さんらしいスタッフロールだと思う。
ピクサーとかとは違う意味ですばらしい。

■おまけ

huluで7月からずっと「毎日ゴジラ旧作を1本ずつあげるというキャンペーン」をやっていたことは効果的だったと思う。
ゴジラというコンテンツの蓄積が、そんなことを可能にした(30本近くあるから)
結局、1本も過去のものはみないまま、シン・ゴジラをみたんだけど。
そういう人にとっても、ゴジラというコンテンツの底力を見せるキャンペーンを打てていて(私に響いた)わけで。
ポケモンと同じで、ひとつのコンテンツの蓄積を、次にどう化けさせるのか、っていうことは、ほんとうにすごいこと。

■自分の仕事と

リソースアーキテクトという仕事をしていて、地域や企業の宝を掘り起こして磨いて、プレゼンテーションして、
という仕事をしているけど、シン・ゴジラは見事にそれを高次元で実現したと思う。

感謝というのが適切か。感動か。すごいのか。
なんのことばがいいかわからない。
でも、なんか、とにかく、ありがとう。といいたい。